IoV2009 に参加してきました

このブログ、エントリの大半が自著の宣伝とか、講演の告知とかだったりするので、お前はちゃんと研究しているのか?という様相を呈しておりますが、研究してますよ。といいますか、あくまでも本業は研究といいますか、身分は博士課程1年の「学生」ですから。

というわけで、今日は先日参加してきた国際ワークショップの報告を。参加してきたのは、The IFIP WG9.5 "Virtuality and Society" International Workshop on Images of Virtuality: Conceptualizations and Applications in Everyday Life、略してIoV2009というタイトルのもの。イベントの名前自体が長いので、何がなんだか、という風に思う方もいらっしゃると思うので、まずはこのワークショップの位置づけを説明いたしましょう。

主催しているのはIFIP WG9.5というグループ。IFIPというのは国際情報処理連合(International Federation of Information Processing)の略称です。IFIPは世界の情報処理系の学会の連合体と考えていただければよいでしょう。一応日本支部の役割を担っているのは情報処理学会だったりします。

情報処理分野の研究といっても幅は広いので、具体的な活動はワーキンググループ単位で行われることが通例です。番号が若いWGは昔からあって、当然オーソドックスな情報処理技術をテーマとしています。番号が大きくなるにしたがって、インターネットやウェブの普及によって表出してきた新しいテーマ、学際的なテーマを取り扱っています。

というわけで、今回のワークショップを主催するWG9.5は"Virtuality and Society"をテーマとしています。"Virtuality and Society"って何なんだ、という方のために、具体的な項目をWGのオフィシャルサイトから拾ってみると、

  • Ethics of virtuality
  • Virtual media and art
  • Computing games
  • Telemedicine
  • Internet studies
  • Organizational Aspects of Virtuality
  • Virtual politics and political web-sites
  • Virtual reality

つまり、ヴァーチャル空間において取り交わされる活動がいかに実社会に対して影響を及ぼすのか、という問題意識に関連する幅広い項目を取り扱っているのがわかります。このように書くと、何でもあり、というように捉えられてしまうかもしれませんが、世界中の情報処理系学会を束ねる国際機関ですから、いい加減な議論は許されません。今回参加して気づいたのですが、"Virtuality"そのものの定義からきっちり議論するという姿勢を貫いています。そういう意味で、学際的かつオープンであるからこそ、コアな概念をしっかり定義し、研究成果の適用をより厳密なものにしようという姿勢なのでしょう。

私はこのワークショップをICIS2008 Paris (International Conference of Information Systems: Information Systems、日本で言うところの経営情報学分野における最大のカンファレンス)で知り、論文を投稿し、今回はポスター発表をしてきました。ポスター発表ということで、気軽に会場に訪れたのですが、ポスター発表の会場で参加者全体のディスカッションが行われ、いきなりポスター発表者は議論の口火を切る役目を振られました。しかもディスカッションの内容は"Virtuality"の定義と有効な研究手法の検討なんていうWGの根本的な課題をテーマとしており、かつ質問内容は発表内容のWGの活動における位置づけを問われるというハードな内容。一瞬おののきながらも、いざ議論が始まると内容が白熱してものすごく面白く、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

IFIPは情報処理分野の研究者の国際交流、共同研究を促進するという目的を持って設立されていますので、IFIPのワーキンググループが開催するワークショップやカンファレンスは、このようにオープンでアットホーム、かつレベルの高い議論をみんなで一緒に行うという姿勢があるように思えます。日本の情報処理系、経営情報系、情報社会系の研究者の方は、参加することを検討されてはいかがですか。

なお、このワークショップの最後にはIFIP WG9,5のビジネスミーティングが行われました。WG9.5は1回このビジネスミーティングに参加するとWGのメンバーになれます。というわけで、私もIFIP WG9.5のメンバーというわけです。地理的な不利(どうしてもビジネスミーティング、すなわちワークショップなどのイベントに参加するコストが大きい)はありますが、こうした議論の場にもっとアジアから参加者が増えればいいのにな、と思います。なお、今後のWG9.5関連イベントの予定は以下のとおりです。メンバーとして、宣伝しておきたいと思います。