ジュンク堂書店新宿店でのトークセッション,ご来場いただいた皆様ありがとうございました

トークセッション内容の公開

先日8月1日,深見嘉明の初書店イベント,ジュンク堂書店新宿店でのトークセッションが行われ,多数の方に来場いただきました.会場にお越しいただいた皆様,ありがとうございました.

前日このブログで予告したとおり「ウェブに菩薩が宿る理由」という題で,私がなぜウェブ上のメタデータ生成・利用の普及による影響に注目するようになったのか,そして『ウェブは菩薩である』の簡単な解説を,実際に幾つかのウェブサービスのデモをしながら行いました.当日用いたスライドを公開しますのでご覧ください.slideshareの都合でちょっと行ズレが生じているのはごめんなさい.

slideshareのスライド公開ページ

今回都合がつかなかった方,次は8月11日(月)リブロ東池袋店で第2段のイベントがありますので,ぜひそちらでお目にかかれればと思います.

イラストレーターのわたなべすがこさん登場

少し時間に余裕があったので,最後にかわいらしいイラストレーションを描いていただいた,わたなべすがこさんに登壇いただきました.
わたなべさんは現在PCのメールアドレスを持っていないというくらい,ウェブやIT機器との接点が少ない方.“ウェブに疎い”方の目線でメタデータアーキテクチャについて理解していただき,図示していただくことで,より多くの読者に理解していただける本にしようということで,イラストレーションをお願いしたのでした.

というわけで,ソーシャルブックマークはまだしも,取り上げた全てのウェブサービスを使ったことがないわたなべさんに,本文の内容を説明するには相当な時間,具体的には5時間×2日間=10時間かかりました.10時間もの間,私と担当編集者の方とに囲まれ,ひたすら説明を受けるという半分拷問??のような(でも,スイーツ(笑)つきの和やかな雰囲気でしたよ.念のため.)時間を経て,渾身のむちゃくちゃわかりやすく,しかもかわいいイラストが完成.入稿いただいたものを見た時には感動しました.

このような裏話もありつつ,トークセッションは和やかな感じで終わったのでした.

さて,わたなべすがこさんなのですが,一冊本を出されています.

I’m“MG”―重症筋無力症とほほ日記

I’m“MG”―重症筋無力症とほほ日記

わたなべさんは重症筋無力症(MG)という持病をお持ちの方です.この病気,前書きにある説明によると

神経と筋肉の接合部で起こる異常のために,神経からの信号が筋肉に伝わりにくくなり,力が入らなくなる病気

筋肉が機能しないということは,歩いたり,物を持ったりという,あらゆる行動が制約されるだけでなく,飲み込む,呼吸する,視線を移す,などといった生命活動全てがうまくいかない“時がある”ことを意味します.詳しい病状は『I’m“MG”―重症筋無力症とほほ日記』をご覧いただければと思うのですが,やっかいなのが病状が日や,時間帯によって変わること.そして調子がいいとき=筋肉がうまく動く時は,健常者と見た目が全く変わらないということです.見た目は健常者と変わらないのに,電車で立っていられない.つまり,優先席を使わざるを得ない.トイレもいわゆる多目的室を使う必要があるわけです.

このMGは筋肉に関する疾患ですが,ADHDなど神経系の疾患,オストメイトのような治療の結果による状態など,周囲からわからないけれど,実は障碍/障害があるという方は実は数多くいらっしゃいます.

最近シルバーシートが「優先席」に,車椅子用トイレが「だれでもトイレ」に,名称が変更されるようになっています.これまで,このようなユニバーサルデザインに基づいたり,利用に際する負担を軽減するような装置は,特定の症状をもつ少数者のためだけに供されるような認識がされていました.シルバーシートや車椅子用トイレという名称は,そうした意識の表れです.しかし,「負担が軽減される」ことを必要とするのは,特定の疾患を持つ人や特定の年齢層の方だけではありません.ましてや妊娠初期の妊婦の方など,見た目ではわからないけれどその装置を必要とする方は,実は数多く存在するのです.そうした方が社会活動を送ることに不都合があるということはあまりに非合理的ですし,さまざまな施設はできるだけ多く活用された方が,設置にかかった投資に対するリターンを拡大できるわけですから,合理的でしょう.

もしよろしければ『I’m“MG”―重症筋無力症とほほ日記』のような本をご覧いただいて,こうした障碍・症状をもつ人がいるということ,具体的にこんなことに困っているんだということを,理解していただけるとうれしいです.また,電車やバスで「優先席」というステッカーを見たとき,ショッピングセンターで「だれでもトイレ」という表記を見たとき,このエントリの内容を少し思い出していただけるとうれしいです.

ちなみに,『ウェブは菩薩である』のイラスト作成の打ち合わせは,ちゃんとわたなべさんの体調を勘案しながら進めていましたので,あしからず.