DiSo projectとオープンウェブの今後

少し前にDiSo Projectの中心メンバーであるChris MessinaのGoogleへの移籍について、本ブログでも取り上げました。MessinaだけではなくJoseph SmarrなどDiSoプロジェクトの他の中心メンバーが昨年から今年にかけてGoogleに移籍しています。しかもMessinaのGoogle内での肩書きはOpen Web Advocate、日本語に訳すと「オープンウェブの唱道者」、いわばウェブのオープンさに関するエヴァンジェリストといった任を負っているわけです。

このMessinaやSmarrの移籍による影響は、早速Google Buzzの仕様に現われたといってもいいのではないでしょうか。もちろんBuzzのActivity Streams実装は、この二人が加入するずっと以前から進められていたのでしょうけれど、昨年から今年にかけての動きを受けてGoogleに注目していたSocial Web関係者の関心にみごとに応えたものといえるのではないでしょうか。

その一方、彼らSocial WebのビッグネームがまとめてGoogleに移籍したことにより、DiSoをはじめとするDistributed Open Webの活動が独立性を損なう事に対する危惧をもつ方もいるわけです。DiSoプロジェクトをMessinaと一緒に立ち上げたSteve IvySix Apartに所属)が、DiSoプロジェクトの今後に関する(ちょっとした心配と)提言のブログポストを公開しています。今日はこのブログポストの内容を少しだけ紹介します。Social Webエンジニアと研究者は必読のポストだと思います。

ポストのタイトルは「The Future of DiSo」。まんまですね。ちなみにDiSoなどが開発普及に取り組んでいるのはActivity Streamsだけではなく、Portable ContactsXRDS/XRDwebfingerなど色々あります。それぞれ、GoogleMicrosoftMy Spaceなどのウェブプラットフォームのビッグプレイヤーに採用され、DiSoの取り組みは、功を奏してきているといえるでしょう。そして、Distributed Open Webの実現に、こうした企業とそこに所属するエンジニアは多大な貢献をしているとしています。

とはいえ、Ivyはこういった指摘もしています。

But the fact is that indie concerns like code availability, validation services, test suites, etc can get lost in the shuffle while the large providers work out what will be implemented and when.

でも実際はコードの公開、バリデーションサービスやテスト環境の提供といった独立エンジニアにとっての関心事は無視されてしまう。大規模な事業者が実装を進める一方でね。

DiSo was begun with the hobbyist site owner very much as inspiration. The question now is this: with the advent of so many hosted sites/social networks/profiles, what is the best target to guide our efforts? What goals will most benefit the web as a whole? Specifically, what should be our goals - both technically and as a community - for the next 1-3 years?

DiSoはホビイストのサイト制作者の感性によって始められたプロジェクトだ。現時点での疑問は以下の通り。膨大な数のサイト、ソーシャルネットワーク、プロファイルが出現している今、我々の活動のターゲットはどこに向けられるべきなのか。全体として最もウェブにとって有用なゴールとは何なのか?特に技術的観点とコミュニティとしての観点において、この1〜3年の間に置かれるべき目標は何であろうか?

This is all great news, but there remains some concern in my mind about who is going to represent the independent developers, the hobbyist site operators, and a growing third group: users who are happy not having to run the whole shebang themselves, but who still want to be able to exercise more control over their online presence and identity.

これら(Google, MySpace, Facebookらのオープン規格採用・実装の実績)は全てグレートなニュースだ。でも誰が独立ディベロッパー、ホビイストのサイト管理者、そして増加する第三のグループである全く自分自身ではなにも運用しない(いわゆるウェブアプリのエンドユーザ)けれども自身のオンライン上での存在やアイデンティティについてもっとコントロールしておきたいと望み続ける人たちを代表していくのかという事に関しての心配は残っている。

として、microformats, ActivityStreams, webfinger, XRDといった規格やWordpress, Movable Type, Drupal, Djangoといったプロトコルについて開発とサポートを続けていくべきだとしています。

恐らく今後も引き続き、大企業のみならず、ベンチャーや独立エンジニアの活動は、ウェブプラットフォームの設計に大きな影響を与え続けることでしょう。W3CのSocial Web Incubation Groupは、こういった多様な主体がもつ力がウェブの発展に生かされるために貢献していくことを目的に活動していますし、XGの活動終了後もW3Cがこのようなスタンスを持ち続けることは間違いないはずです。(あくまで、深見嘉明の個人的な観測ですが。)