John Allsoppがやってきた ヤァヤァヤァ

オーストラリアから来襲

自分の発表が終わったら,今度は休むまもなく人の発表を聞く番です.なにせ,micorformats普及活動の中心人物のJohn Allsopp氏が来日して連日講演というのですから.メタデータ普及による情報流通とコミュニケーション形態変化に関する研究をやっている身としては,とにもかくにも生Allsoppを見なきゃ話になりません.

出席したのが

の2つ,というか金・土・日ののべ3日間.最初はウェブデザインやってないから『マイクロフォーマット』出版記念セミナーだけ出るか,と思っていたら,Johnに質問して名刺交換したら「明日も,あさってもイベントがあるから来い!」といわれて流れで参加.そうしたら,思いもかけない収穫が多数あって大満足.しかし,その収穫物をきちんと消化しようしていたら,結局月から金まで一週間をフルで使うことになってしまった.とりあえず,このエントリは消化した内容のメモ代わりです.

そもそもmicroformatsって何?

で,このブログの読者は僕の知人か,IMCでの講演を聴いてくださった方か,もうすぐ出る本を読んでいただいた方が大半を占めると思うので,microformatsについて少し説明を.

  • 超初心者の方向け説明→拙書,ウェブは菩薩であるの第7章,「合コンでのアドレス交換とマイクロフォーマットの意外な関係」を読んでください.(これ,会場でお会いした方からは凄い突込みが入りそうだなぁ,,,)
  • そこそこウェブ技術について知識があるような方向け説明→これが難しい.強いてあげるなら@ITの記事,マイクロフォーマット=Web2.0の真打ちとなるか?くらいかなぁ,と.かなり古い記事ですが,これを読んで私はmicroformatsに注目し始めたような記憶が,,
  • マークアップとか,構造化とかって言われてすんなり受け止められる人向け説明→日本語版オフィシャルWiKiでも読んでください.

『マイクロフォーマット』出版記念セミナー

元はといえば,John Allsoppが書いた

Microformats: Empowering Your Markup for Web 2.0

Microformats: Empowering Your Markup for Web 2.0

の日本語版,
マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~ (Web Designing BOOKS)

マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~ (Web Designing BOOKS)

が7月に毎日コミュニケーションズさんから出るということで,訳者の木達 一仁さんmicroformatsに関する基本説明と木達さんとJohn Allsopp氏との対談という内容で開かれたのでした.

内容は,,,,もう1週間前なので,他の参加者の方がブログエントリを上げてくださってます.主だったものをここで列挙,と.

あと,主催者でスピーカーだった木達さんのブログでも

で,主な内容は上記ブログを読んでいただければ.私ごときが加えられるものはほとんどありません.
強いて加えるならば,社会科学系研究者としてJohnにさせていただいたこの質問,
MicrosoftがIE8にからめて,microformatsに競合する規格WebSlicesを提唱(というか導入?)しているが,この動きによって標準規格が乱立するという危険性は感じないのか?そもそもMicrosoftの動きについてどう思いますか?」.
どうも一人だけ観点が違うよー,的な空気があってびびった*1のですが,でもそれに対して返ってきた回答があまりに(研究者の立場からすると)面白くて感動.
Johnの回答は,
「全く心配していない.それどころかMSの動きは大歓迎だ.WebSlices/IE8によってブラウザ2.0の時代が始まろうとしている.ブラウザ1.0は,ただコンテンツを(目で*2)読むという時代だったけれど,WebSlices/IE8により,ブラウザがコンテンツを抽出して使いまわすためのツールとして使われるブラウザ2.0の到来に貢献してくれる.こうした行為があたり前になるということは,microformatsにとっても素晴らしいことなんだ.*3
というもの.自分の規格が普及することよりも,WWWの活用方法が進化することを優先するというこのスタンスは,太っ腹と言いますか,本質的な進化を希求するという姿勢で,感動すら覚えます.(でも,翌日以降のCSS関連の講演ではIEの話なんてろくに出ず,,,っていうか無視状態でしたけどね)

ウェブ標準の世界では,よくMS=悪の帝国論がささやかれ,Yahoo!焦土作戦までして買収を拒否したくらいだったりしますが,最近ではIE8にしてもHTMLなどの標準にきちんと準拠したり,W3Cの活動にも結構貢献しているようですので,意外に世間(というかブロゴスフィアやウェブジャーナリズム)の印象ほど,正しくないのかも,,,

MSの話はさておき,microformatsの旗振り役が競合規格の普及を歓迎するというスタンスを示したのはかなり面白いことで,最近ではBru-ray対HD-DVDなどといった標準規格競争では,まずありえないことです.やっぱりウェブのガヴァナンスって,既存の研究ではカバーできていない領域が随分大きいことを実感です.

SwapSkills for Happy web weekend

こちらは印象としてはmicroformatsというよりもCSSに重点が置かれていたかな,という感じ.詳しい内容はやはり以下のブログを・・・

もはや,まとめサイトというか,リンク集になってない,という突っ込みも受けそうですが,それはそれで役立つでしょ,と開き直りつつ,若干のオリジナルコンテンツを.

で,CSS3の凄さ,素晴らしさを堪能したわけですが,これってIMC Tokyo 2008でマスメディア側に問うた,「コンテンツの編集・編成のイニシアティブを,コンテンツの送り手と受けて,どちらが取るの」という課題の別側面だったりします.
CSSというのは,情報とデザインの分離を前提とした技術です.これに対し既存の出版メディアは「フォントやレイアウト,紙質まで含めてトータルで1つのコンテンツが成立する」という立場を取ります.だから出版社のウェブサイトはFlashやPDF使用頻度が高くなるわけですが,これって完全にウェブの思想からは外れることなんですよね.紙の出版物に携わってきた方が,ウェブでどう情報発信・双方向的なコミュニケーションやマーケティングをするか,という時に,これは避けては通れない踏み絵となります.そう,思想間の戦いですから,完全に宗教戦争の域ですね.

出版の場合,当然ビジネスで行うわけですから,

  • 広告・プロモーションの実施・展開における検討
  • 著作権に関する検討
  • コンテンツ作成の分業形態に関する検討
  • アーカイブビジネスに落とし込んだときのマネタイズ手法に関する検討

と様々な角度から検討することが必要となります.というか,それがいまだにできていない.これは,比較的ウェブ活用が早かった新聞社にしても同じ状況で,記事ごとにParmalinkがついていたり,Trackbackができればいいというものではないでしょう.これまで,あまりに関係する変数が多すぎるために,先延ばしにされてきたこうした課題に,否が応でも向き合わざるを得なくなる日は,もうやってきているというところでしょう.

その点,テレビやラジオといった動画・音声メディアはまだ紙媒体のようなディレンマ少ないでしょう.だって,ステレオ放送している番組がモノラルのレシーバで受信されていることに怒るラジオ局はないでしょうし,テレビなんて昔から白黒/カラー,画面サイズ,ステレオ/モノラルなど受信環境が千差万別であることが前提ですから.ただし,それでもYouTubeに対して「あんなにビットレートが低い,低画質環境でコンテンツを流しやがって!」という不満をぶつけた放送局があったことも事実.メディアにとり,コンテンツにとり,本当に大事な部分,譲れない部分というのをもう一度見つめなおす必要があるのではないかと,こんな場所で思わされてしまったのでした.今更,といわれるかもしれないけれど.

CSS以外で凄かったのがセマンティックウェブ業界の重鎮,The Web KANZAKI神崎正英氏による講演,セマンティック・マイクロブログ.これが凄い.今流行しているtwitterはてなハイクもそうなのか?)などのマイクロブログによる社会ネットワーク作成がRDFでできてしまったり,位置情報の処理などについて超凝縮されたプレゼン.これ,生で見れたのはものすごくラッキー.恐らく,ここまで具体的,かつわかりやすくにRDFを活用することにより得られるベネフィットを提示したプレゼン・資料ってないのではないか,と.感動して人に伝えようと思ったら,既にみんな知っている罠,,,,.確かにはてぶホッテントリ入りしてたしなぁ,,,,.

結局アルコールに漬かる

で,SwapSkills for Happy web weekendでは,日曜のランチミーティング,そして土曜の銀座打ち上げ,日曜の全体打ち上げと,ひたすら飲み食いしながら色々な方と交流することができました.技術的な知識が全然ない私に,親切に色々教えてくださったり,現場の状況を聞かせていただいた皆様,ありがとうございました.それにしても,普段RSSに登録して読んでいるブログの中の人と,いきなり出会うとなんだか緊張してしまいます.今後とも,よろしくお願いいたします.

Ultra super mega thanks!!! To John!

During I'm writing this entry. I received e-mail from John Allsopp. I'd like to express "ultra super mega thanks!!" to you.
ま,これは当日会場にいらっしゃった方だけがわかる内輪ネタパラグラフということで.

*1:貴重な質問タイムを使わせていただいてすみません

*2:正しいマークアップがされていれば,もちろん音声読み上げとかもできるのだけれど

*3:大意はこれであってますよね?間違っているところがあれば,ぜひコメントなどでお知らせいただけると助かります