集合智をつかまえろ〜第3回:アンドロイドは電気羊の夢を見るか〜全ては機械仕掛け、とは限らない

◆2008年5月のまえがき
この回はがんばっている記事だなぁ,という感じです.
サイト紹介のところで取り上げたMARS FLAGとQooqle,それぞれ今でも国産検索サービスとして,それなりの評価と地位を固めた感じもしますね.
さて,連載タイトルにもある集合智,世間的には"集合知"という表記の方が多そうなのですが,wisdom of crowdの訳なんだから漢字は"智"だろー,というのが私のこだわりでした.ま,集合智は本当に智という文字で表してよいほどすばらしいものかどうか,という疑念があるのも分かりますけどね,,,

◆ここから当時の掲載原稿

先日、目を覚ますとやたら暑い。どうしたのかと思ったら、停電で電気が止まったためにつけていたエアコンが止まっていたのでした。通勤・通学時に停電による電車の不通に巻き込まれた方は本当にお疲れ様でした。幸いにして私の家のは30分ほどで電気が復旧したのでエアコンをつけて、冷蔵庫の中身をたしかめてホット一息。ところがテレビをつけると各局のワイドショーが大騒ぎ。ロンドン発航空機テロ未然摘発の直後だったので「すわ、テロなのでは?」という論調まで飛び出してました。いずれにせよ、架線一本切れただけで首都圏数百万人が大騒ぎしたわけで、いかに今の生活が電気とテクノロジに頼ったものかを実感したわけなのでした。

テクノロジといえばウェブで必要な情報を探すときに必ずお世話になるのは検索サイト。皆さんどのような検索サイトを使っていますか?日本ではダントツでヤフーを利用する人が多いのですが、アメリカやヨーロッパで検索サイトのシェア1位はグーグルです。技術力ではグーグルのレベルが最も高いというのがインターネット業界の共通認識なのです。そのグーグルが持つ検索技術(のコア)は「ペイジランク」と呼ばれています。このペイジランクこそが無数にあるウェブ上の情報の中から必要な情報を選び出してくれるコンセルジュ役を果たしてくれています。
ペイジランクとはグーグルの創業者のうちの一人、ラリー・ペイジ氏の名前から取られたネーミングで、彼はこのページランクの仕組みでスタンフォード大学の博士号を取得しています。いったいどんなすごい技術なんでしょうか。ペイジランクコンセルジュさんはいったい何をしているのでしょうか?

実はリンクの数を数えることなのです。サイトの重要度はどのくらい沢山の他のサイトからリンクがはられているかによって決められます。いい情報があったら繰り返しチェックしたいし、人にも教えたいですよね。そういう時、自分のサイトを持っている人(ブログを書いている人もそうですよ)はその情報があるサイトのアドレスを自分のサイトに載せておきます。つまり、リンクを張るわけですね。逆に言えば沢山リンクが張られているサイトは多くの人から評価されていると判断するのです。

つまり、技術を生み出したラリー・ペイジ氏は当然すごいのだけれど、ペイジランクコンセルジュさんはホームページを作っている地球上の無数の人たちのおすすめ情報を整理してネタ帳にしているわけ。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」は映画「ブレードランナー」の原作タイトルなのだけれど、2006年現在、アンドロイドよろしく機械が勝手に夢や概念や意味づけを作り出すなんてことにはなっていないわけです。これからも当面は難しいでしょうね。
むしろインターネットが実現させたのは世界中の人たちが協力し合って何かを作り出すという仕組みだったりするのですね。しかもペイジランクコンセルジュさんに協力している=実際にリンクを張っている個人個人はほとんど自覚せずに協力しているわけです。

無意識にしている行為(自分のホームページにリンクを張ること)ですら、みんなにとってものすごく便利なもの(検索サイト)を生み出しているのだから、みんなで自覚して協力し始めたらどんなことになるのだろう。もしくは無意識の行為からもっとすばらしくおおきな価値を生み出すには、インターネットというインフラをどのように設計すればいいのだろう?そういった試みが今も世界中で行われています。そしてその成果の一端が先週までにご紹介した「タグ」を使った整理方法なのです。

ウィキ*『ペイジランク』と『集合智』
ペイジランクコンセルジュさんの智恵の元、みんなの智恵の集合のことを「集合智/wisdom of crows」と呼びます。先週ご紹介したフォークソノミーもみんなが情報を整理した基準のあつまりなので、典型的な集合智なのですね。

おすすめブックマークPick Up
今回は日本生まれの変り種、検索サイトをご紹介。
たまにはこんなサイトで検索してみるのも面白いのでは。

1)MARS FLAG
検索結果にサイトの縮小画像が表示されると検索サイト。
訪れる前にサイトの雰囲気がわかるのが便利。

2)Qooqle
パクリじゃん!?と思ったあなた。見た目はそうなのだけど、中身はすごい。
ヤフーとグーグルとアマゾンとはてなの技術を組み合わせて検索してくれます。
一度検索してみてください。
すると、なんじゃこら?な、形で検索結果が表示されます。
徹頭徹尾怪しげな(デザインの)サイトですが、じつはこれが合理的。
なぜなのかは回を改めて。